『思穴』
今日も続く、また暑日の半に。
その図書館は、とても居心地の良い図書館だったが、
右と左に座っている以前は自分だった不思議な生き物は、
事あるごとにキーボードのキーを叩いていた。
まるで、文字を打ち込んでいるかのように見えるように。
魚を捉えることに、この数日を費やしてきたのだが、
ようやくその手応えが感じられた矢先に、
漁業組合から通達がきた。
この大事な時に。
頭の中は、熱帯夜から一気に氷河期へと映る。
その通達の内容は、こうだ。
「貴殿の魚は、一見魚のようであるがそれは全くの危ない魚である。」
「よって、それを市場で推し量ることは、当分の間控えていただきたい。」
「1~12週間の休漁期間を取ること。」
あぁ、それは愛のごとく壊れやすく難解だ。
ただの「魚」を私は、皆に美味しく食べてもらいたかっただけなのだ。
もちろん、わかってくれている人たちもいる。
ただ、やはり世間はそれを許してはくれないのだろう。
夢から覚める。
これでまた二度目の目覚めになる。
魚はただ悠然と泳ぐ。何も思考を巡らせることをせずに。
賢き魚。
知の魚。
夕べの味はどうだっただろう。
終わりは、また始まりに夜へと誘う。
鳥が鳴くのは、平和への回帰。
グリム童話なコネクション。
話は裏の裏に真実を導く。
ただこの先をくれれば。
私はどんなに、どんなに、
いや、そのままを。
紫の煙が、太陽を輝かせる。
灰色の液体が語りかける。
1匹の魚と2匹の魚が。