臍からキノコが生えた日には

例えば人間、川に落ちればカエルの子。

「なんとも気持ちの悪い話。」

f:id:kabiru:20170523000553j:plain

 

 

今日は、人生最高の日である。

なにせ今や世界の総人口70億の中の一人として、

いや、一番の最初の人として、

この地球によく似た未開の惑星に初めて降り立つ

その人が私なのだから。

 

 

この惑星は、ある連合企業のいち研究員が、

ほとんど偶然と言っていいほどの確率で

発見した。

その頃、とは言っても10年位前の地球は、

文明や技術こそ進んだものの、未だに

地球の外に出られないでいた。

一時期には、少子化からの人口減少加速で

30億人まで地球人は減った。

人口が減ることで、何に一番困ったかというと、

食べるものが次第に減っていくのだ。

なぜか?

生産する人がいなくなるからだ。

工場でシステマチックに食料を作っていれば

問題がないように思えるのだが、

人間は、一度食べたものの味を覚えていて、

どうしてもまたあの本物の味を食べたくなってしまう。

 

 

コンピュータの発達により、作業が効率化され、

富も増えていった。みんなお金だけは持っている。

そういえば、小さな頃に食べたあのハンバーガー、

当時はジャンクフードとかいわれてたけど、

あれは、あれで美味しかった。

ピザもいろいろな味がバラエティーに富んでいて

うまかった。それに炭酸水が良くあうんだ。

シャンハイで食べた中華もヨダレが止まらなくなる位に

うまかった。

日本の寿司。うまかった。ウニだけをもう何個も何個も食べたっけ。

 

 

今は、材料不足で人工的に作られた合成材料を使って

それらしく、”本物”に近い見た目と味のするものを手に入れられるが、

やはり、何か違うことはみんな良くわかっている。

そこにおいて、連日のごとく、メディア、特にTV放送で

昔のグルメ特集番組なんか流すから、

”本物”は、争奪戦でしか手に入れることができない。

 

 

昔のようにコンビニやお店で何でもすぐ買えた時代が懐かしい。

もちろんご多聞にもれず、一部の特権階級の方々は、

何の労もなくお召し上がりいただいたわけだが。

 

 

で、やはり世界規模的に革命が起きる。

フランス革命の再来。

各国のお偉い様方(”政治的に”だけでなく”産業的に”)が独占していた

食料特権を民衆が奪い返した。

食べ物の恨みは、いつの時代も恐ろしい。

汝、与えよ。

 

 

おなかは、満たされた。

次に何をするか。

”寝る”でしょう。

効率化された社会では、ほとんど働かなくていい。

 

 

今や地球の95%が水に覆われている。

そんなところに70億人の人がひしめき合っている。

食料も作らなくてはならないので、空いている空間は食料製造に当てられている。

もちろん海中でも。

どこか行こうにも、人がいる。

じゃあ、家にいよう。

そしていつの間にか、寝てしまう。

しかし、寝られるプライベートな場所はごくわずかしかない。

 

 

探すか。

 

 

今までに何度も地球に似た星は発見され、人も送り込まれている。

しかし、ほぼ原因不明で全てがなかった事になる。

未知と遭遇したのか、はじめからそんな星はなかったのか。

 

 

そして10年前、先の研究員がこの未開の星を発見した。

ちなみにその研究員は、重度の水アレルギーです。

 

 

f:id:kabiru:20170523000634j:plain

 

 

今度こそは、抜かりは許されない。

各国の精鋭が集まり、吟味と準備に時間と労力をかけて。

考えうる最高の計画を立てた。

 

 

その計画の実行者として、私が選ばれた。

私の輝かしい功績は、語るもべからず。

厳しい訓練。考えうる未知との意思伝達方法の習得。

映画から学ぶ、異星人との遭遇時の失敗例など。

あらゆるものが、私に託された。

 

 

そして、私は今、その星に降り立った。

計画は、滞りなく進んでいく。

1回目の地球への報告も無事に済んだ。

地球からの映像には、歓喜する人々。

この星は、間違いなく人類の第二の故郷となるだろう。

 

 

簡易的ではあるが、私の家がある。

人類の叡智がつまった家だ。

あらゆる環境にもストレスフリーで過ごせるよう、設計されている。

 

 

仕事にストレスは害にしかならない。

特に人類存亡をかけたこの大仕事には。

 

 

ところで、皆さん、最近背筋も凍るような

気持ちの悪い体験をしたことはありますか?

 

 

私は今、私の家のトイレに座っています。

出切った後の高揚感は、何とも素晴らしいものですよね。

 

 

そこで私は、とてもぞっとしました。

 

 

今の私には、絶対的に必要なもの。

 

 

紙、がないのです。

 

 

 

 

 

 

でも、大丈夫です。

 

 

私は、いわゆるアンドロイドでありますから。